アラ・パキス博物館/北斎展 -「平和の祭壇」が復元されている博物館で北斎を見る

アラ・パキス博物館/北斎展:Museo dell’Ara Pacis/Hokusai~Sulle Orme del Maestro - 見どころ、概要、歴史、アクセス・行き方、展示、感想など

初代ローマ皇帝のアウグストゥス帝(アウグスティヌス帝)に捧げられた「平和の祭壇」が復元・展示されている博物館。ここで葛飾北斎の企画展を見ました。

 

アラ・パキスとは

「アラ・パキス(Ara Pacis)」とは「平和の祭壇」という意味です。正式名称は「アラ・パキス・アウグタエ(Ara Pacis Augustae)」で「アウグストゥスの平和の祭壇」となります。

この祭壇は、皇帝アウグストゥスがヒスパニアとガリアで大勝利したことを称えるため元老院が製作を決定し紀元前13年から紀元前9年にかけてつくられました。

この祭壇は精緻なレリーフが彫られた白い大理石の壁で囲われています。レリーフは、ローマ帝国やアウグストゥス帝の威光や繁栄、ローマ時代の宗教観などをテーマとしているようです。文字ではなく写真や動画の代わりに視覚的に誰もがわかりやすいかたちで伝えているのでしょう。

元々、設置されていた場所は、カンプス・マルティウス(マウスの野)というところで、現在のパンテオンやトレビの泉、スペイン広場などがある一帯周辺のようです。設置後、数世紀にわたるテヴェレ川の氾濫で地中4mに埋まってしまいましたが、1568年に破片が発見されました。その後、1859年に別の場所で破片が発見されたり、1903年や1937年に本格的な発掘調査が行われました。

アラ・パキス博物館の概要と沿革

現在、発見された破片は、ヴィラ・メディチ、バチカン美術館、ウフィツィ美術館、ルーヴル美術館などにも保存されていますが、20世紀の発掘調査によるものはアラ・パキス博物館で復元・展示されています。

アウグストゥス生誕2000年記念事業として行われた1937年の発掘調査を受けて、翌1938年にムッソリーニは、アウグストゥス廟の近く=現在の博物館の場所あたりにアラ・パキスを復元し収める施設を建設を決めましたが、第2次世界大戦の影響のため完成には至らず建設途中で頓挫してしまったようです。1950年頃からアラ・パキスを保護していた砂袋が撤去されたりなどは行われたようですが、本格的な保護は1970年になってからのこと。1980年代に入り修復・復元も体系的に行われるようになりましたが、1990年代に建物の温湿度管理などに課題があり保存上よくないことが明らかになり、1995年に新しい建物を建設することになりました。

こうして、現在の博物館が2006年に開館。開館後は、そのデザインがローマの古い町並みにあわないなど批判があったようです。

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アラ・パキス博物館の展示

この博物館のメインの展示は、復元されたアラ・パキス(平和の祭壇)です。当たり前といえば当たり前ですが、ほとんどそれだけです。そのため、レリーフを細かく見ていくとか何か目的がある人は別にして、あっという間に見終わってしまいます。正直なところ「えっ、これだけ?」って思ってしまいました。

道路を挟んで向かい側に、アウグストゥス帝をはじめとするローマ皇帝やその一族などが眠るアウグストゥス廟が見えますが、アラ・パキスはオリジナルの場所ではないものの、この場所にあることに意義があるのかもしれません。

アウグストゥス廟は、現在、保存・修復工事が行われていて、いずれ公開されるでしょうから、セットで見学するとアウグストゥス帝やローマ帝国を知るのに良い場所になるかもしれません。

「北斎:巨匠の歩み」展

アラ・パキス博物館に行ったのは、実のところ、北斎の企画展HOKUSAI: Sule Orme del Mestro”を見るためです。

ご存知のように、葛飾北斎は印象派にも影響を与えたことなども含めて欧米でも良く知られている浮世絵師です。2017年5月には大英博物館でも北斎展“Hokusai: beyond the Great Wave”が開かれましたし、欧米でも人気のようです。ちょっと古いですが、1998年のアメリカの雑誌・ライフが選んだ「この1000年で最も重要な功績を残した世界の人物100人」の中の唯一の日本人です。この選考自体ちょっとどうなのかという点も少なくないですが、それでも世界的な影響を与えた画家であることは間違いないでしょう。

さて、北斎展ですが、2017年10月12日から2018年1月14日の会期。前後期に分かれ、それぞれ100点ずつ合わせて200点が展示されました。

北斎の作品では「冨嶽三十六景」とか『北斎漫画』が有名です。特に大波が迫力ある「冨嶽三十六景」の「神奈川沖浪裏」は欧米では“the Great Wave”の通称で知られ「北斎といえば」的な作品です。リーフレットの表紙にもなっていました。もちろん「赤富士」とよばれる「冨嶽三十六景」の「凱風快晴」も有名です。そういえば、こうした北斎の作品はもうすぐ日本のパスポートにもなりますね。楽しみです。私のパスポートも切り替えられると良いのですが。

驚いたのは、北斎展といいながら、半分ぐらいは渓斎英泉の作品だったことです。英泉は、私淑はしていたものの北斎の弟子ではなかったようですから不思議です。北斎の影響というなら弟子など他の浮世絵師も取り上げれば良いのにと思ってしまいました。何か理由があるのかもしれませんが、表示などは見つけられませんでした。

作品は千葉市美術館やジェノバにあるキヨッソーネ東洋美術館、日本のコレクターから借りてきているようでした。

かなりの混雑というのをブログの記事で読んでいたのですが、ガラガラでした。もっともこの日はクリスマス・イブ。2時までの開館でしたし、外国人観光客向きの企画展ではないので空いているのは当然でしょう。英泉が多かったとはいえ、ローマで北斎をゆっくり見るのも乙なものです。「冨嶽三十六景」も25点ほどまとめてみることができましたし。

企画展のため写真は撮影禁止でした。

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アラ・パキス博物館へのアクセス・行き方

地下鉄A線のスパーニャ(Spagna)駅またはフラミニオ(Flaminio)駅から歩いて8~9分ぐらいです。スペイン広場からも歩いて9分ぐらいです。

ひとこと

歴史的に貴重なものですし、アウグストゥス廟が公開されるとこの博物館との相乗効果が生まれそうです。それまでの間は学術的にはともかく一般的な観光客にはちょっと難しいかもしれません。

企画展の会場は同じ建物内ですが、入り口が別でいったん外に出ないといけません。ちょっと迷ってしまいました。それにしてもなぜここで北斎展だったのでしょう?

info

Museo dell’Ara Pacis

  • 訪問日: 2017年12月24日
  • 開 館: 2006年
  • 入館者数: -
  • 所在地: イタリア・ローマ(Lungotevere in Augusta – 00186 Roma)
  • アクセス: 地下鉄A線のSpagna駅またはFlaminio駅から徒歩8~9分
  • 入館料: 10.5ユーロ(大人・個人・当日) ※各種割引制度あり 企画展は別料金。北斎展と合わせて17ユーロでした
  • 開館時間: 9時30分~19時30分。12/24・31は14時まで
  • 休館日: 1/1、5/1、12/25
  • 公式サイト : http://www.arapacis.it/

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訪問した日の旅行記です。