沖縄県平和祈念資料館 - 沖縄戦の実相を知り学び、次代に伝える拠点、平和学習の拠点

沖縄県平和祈念資料館:理念、歴史、展示、感想など

1945年3月末から約90日間に及んだ沖縄戦は、「鉄の暴風」と呼ばれるほどの艦砲射撃や爆弾投下があり島々の山容を変え、20数万の尊い人命が失われました。沖縄戦は日本に於ける唯一の県民を総動員した地上戦であり、軍人以外にも多くの県民が犠牲になりました。こうした沖縄戦の実相を正しく知り、後世に伝えていく場、平和の大切さを考える場がこの資料館です。

設立理念

ホームページに記載されている設立理念を、少し長いですが、そのまま引用させていただきます(http://www.peace-museum.pref.okinawa.jp/hajimeni/index.html)。

“1945年3月末、史上まれにみる激烈な戦火がこの島々に襲ってきました。 90日におよぶ鉄の暴風は、島々の山容を変え、文化遺産のほとんどを破壊し、20数万の尊い人命を奪い去りました。沖縄戦は日本に於ける唯一の県民を総動員した地上戦であり、アジア・太平洋戦争で最大規模の戦闘でありました。

沖縄戦の何よりの特徴は、軍人よりも一般住民の戦死者がはるかに上まわっていることにあり、その数は10数万におよびました。ある者は砲弾で吹き飛ばされ、ある者は追い詰められて自ら命を絶たされ、ある者は飢えとマラリアで倒れ、また、敗走する自国軍隊の犠牲にされる者もありました。私たち沖縄県民は、想像を絶する極限状態の中で戦争の不条理と残酷さを身をもって体験しました。

この戦争の体験こそ、とりもなおさず戦後沖縄の人々が、米国の軍事支配の重圧に抗しつつ、つちかってきた沖縄のこころの原点であります。

”沖縄のこころ”とは、人間の尊厳を何よりも重く見て、戦争につながる一切の行為を否定し、平和を求め、人間性の発露である文化をこよなく愛する心であります。

私たちは、戦争の犠牲になった多くの霊を弔い、沖縄戦の歴史的教訓を正しく次代に伝え、全世界の人びとに私たちのこころを訴え、もって恒久平和の樹立に寄与するため、ここに県民個々の戦争体験を結集して、沖縄県平和祈念資料館を設立いたします。

沖縄県平和祈念資料館の歴史

旧平和祈念資料館は、1975年6月にオープンしました。1972年の復帰から3年後で、沖縄海洋博が開催された年です。展示内容には批判もあったようで、早くも1978年には展示のリニューアルが行われています。その後、多くの人が沖縄戦の実相にふれ平和を考える場として重要な役割を果たしてきた資料館ですが、1990年代に入り平和祈念公園の整備とともに規模の拡大、移築の話が持ち上がったようです。移転する前の資料館の入館者数は、1998年度174,179人、1999年度175,437人でした。

現在の平和祈念資料館は、開館前には展示内容についての論争などもあったようですが、2000年4月に開館。現在、年間(2016年度)372,502人の入館者があり、旧資料館に比べておよそ2倍の入館者数となっています。規模を拡大した効果や平和学習の定着がうかがわれます。

平和祈念資料館は、平和記念公園内にありますが、この公園があるのは摩文仁(まぶに)の丘。日本軍が追い詰められ激しい戦闘が行われた場所です。

資料館のすぐ目の前には、世界の恒久平和を願い、国籍や軍人、民間人の区別なく、沖縄戦などで亡くなられたすべての人々の氏名を刻んだ記念碑「平和の礎」があります。これは太平洋戦争・沖縄戦終結50周年を記念し1995年に建立されたもので、現在、24万人以上のお名前が刻まれています。この平和の礎は、戦争や平和について考えさせてくれ、多くのことを教えてくれるような気がします。

沖縄県平和祈念資料館の展示

ここも実際に訪れて展示を見ていただきたい資料館です。

住民の視点で捉えた沖縄戦」を展示理念とし<沖縄戦への道><鉄の暴風><地獄の戦場><沖縄戦の証言><太平洋の要石>の5つのテーマから構成されています。沖縄戦だけではなく、戦後の沖縄についても紹介している点がこの資料館の特徴の一つともいえると思います。

どの展示も知り学ぶべき重要なものだと思いますが、旧平和祈念資料館から受け継がれてきている証言の展示は、展示理念の「住民の視点で捉えた沖縄戦」を象徴しているように感じられました。

常設展示以外に企画展なども行われていますが、「子ども・プロセス展示室」もこの館の特徴でしょう。この展示室は、未来を担う子どもたちが積極的に平和を愛する心を育むことを意図して設けられていて、世界の様々な国の子どもの暮らしなどが紹介されています。戦争のない世界となるためには相互理解、相互尊重が大切ということを伝えているのでしょう。そのほかにもアジア・太平洋戦争後の戦争・紛争、いじめなどの人権問題、地球環境問題などに関する展示がありました。

※展示室内は写真撮影ができないので写真がありません。

沖縄を訪れた際には、ぜひ訪れるべき資料館だと思います。今回、旧資料館も含めて4回目の見学でしたが、いつも気づかされることがあります。そして決して忘れてはならないことがここにはあります。

沖縄県平和祈念資料館へのアクセス

南部の平和祈念公園内にあります。近くにはひめゆり平和祈念資料館もありますので、合わせて訪れるのもとても良いと思います。

info

沖縄県平和祈念資料館
・訪問日:2018年7月
・設 置:沖縄県
・管理運営:沖縄県
・所在地:沖縄県糸満市摩文仁614-1
・アクセス:那覇空港から車で約30~40分
・開 館:1975年6月11日、2000年4月1日に現在地に移転しリニューアル・オープン
・面 積:約10,179㎡ ※常設展示室1,360㎡
・入館者数:372,502人(2016年度)
・入館料:大人300円、小人150円。団体割引など各種割引制度あり
・開館時間:9時~17時
・休館日:年末年始
・公式サイト : http://www.peace-museum.pref.okinawa.jp/index.html