ピカソ美術館 - さまざまなピカソに出会えるパリにある美術館

ピカソ美術館/Musée Picasso:Musée National Picasso, Paris:見どころ、概要、歴史、アクセス・行き方、展示、感想、最新情報など

ピカソ美術館は、17世紀の豪邸ホテル・サレを改装してつくられ、ピカソの各時代の絵画、彫刻、版画、スケッチなど多数の作品に出会える美術館です。頻繁に展覧会が開かれているのも大きな魅力です。ピカソがアトリエを持ち長く活動したパリにあります。

 

ピカソ美術館の歴史・沿革・概要

ピカソ美術館は1985年10月にオープンしました。ピカソが亡くなった翌年の1974年には、遺族から相続税として作品などを受け入れることとともにオテル・サレ(Hôtel Salé:塩の館)を美術館にすることが決まりました。かなり早い決定だったといえると思いますが、その決定には当時の文化担当国務長官のミッシェル・ガイ(Michel Guy)氏が大きくかかわっていたようです。ちなみに、このミッシェル・ガイ氏はポンピドー・センターにも関係している文化に深いかかわりのある政治家です。

そして、諸手続きも進められ、1979年から美術館への改装工事が始まり1985年に完成し開館しました。

ホテル・サレ(Hôtel Salé)

ホテル・サレが建つマレ地区は、14世紀に国王シャルル5世が居を構えたことをきっかけに、貴族などの豪華が立ち並ぶ高級住宅街になりました。現在でもおしゃれなエリアとして知られているようです。

そんな地域にホテル・サレが建設されたのは1656年から1660年にかけて。塩税徴収官のピエール・オーベール(Pierre Aubert)の邸宅として建設されました。1630年代から1640年代に政略的な結婚や国王のアドバイザーなどを含めていろいろなことで財を成したようですが、塩税徴収官の時に建設した豪邸であることから、ホテル・サレ<塩の館>と呼ばれるようになりました。

その後、フランス革命の時には一時、国家財産にもなりましたが、売却され1797年から1962年まで同じ一族が所有していました。その用途としては、文豪バルザックが学んだ寄宿学校などいろいろな学校の校舎として使われることが多かったようです。1964年にはパリ市の所有となり、1968年10月に歴史的建造物に認定されました。1974年から1979年にかけて修復工事が、続いて美術館への改装工事が行われ、1985年に開館しました。

近年では2009年から大規模な改装工事が行われました。当初の計画では2011年に終わる予定だったようですが、結局、2014年10月25日にリニューアル・オープンしたそうです。

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ピカソ美術館の見どころ、展示:充実している展覧会

私が行った時だけなのかもしれず、いつもそうなのかわからないのですが、固定的な展示は少なく、展覧会を中心に展示替えが頻繁に行われているようです。

展示は5層に分かれています。

入館は1階からです。地下1階はピカソの作風の変遷などを外観できる展示室で、こちらは作品を入れ替えているかもしれませんが、基本的には常設だと思います。

1階と2階では、“Picasso 1932. Année érotique”(ピカソ1932年・官能的な一年)という展覧会が2017年10月10日から2018年2月11日の会期で行われていました。1932年にマリ・テレーズ(Marie-Thérèse)という女性と共同生活をはじめその女性から刺激された作品を残していることや回顧展が開かれたことなどピカソの画期となった一年に着目したものです。こちらはイギリスのテート・モダンと協働しているようです。

3階では“Picasso 1947. Un don majeur au Musée national d’Art Moderne”(ピカソ1947年・国立近代美術館への大きな寄贈)という展覧会が2017年10月24日から2018年1月28日の会期で行われていました。1947年に国立近代美術館にピカソが名作10作品を寄贈したことにちなむ展覧会です。こちらは近代美術館の後進のポンピドー・センター40周年を記念しその協力を受けて開催しているようです。

4階では、ピカソの個人コレクションに着目した展覧会が2017年10月24日から2018年1月28日の会期で行われていました。3階の展示と同じ期間です。

私が訪れた後には、2018年3月27日から7月29日の会期でゲルニカに関する展覧会が、4月10日から11月4日の会期でピカソ美術館の家具などを手掛けたディエゴ・ジャコメッティ(あのジャコメッティの弟)の展覧会が、9月4日から2019年1月13日から名作(Masterpieces)の展覧会が開かれる予定でした。

このように、1階と2階、3階と4階を組みにして、完全ではないものの展覧会の会期を重ねながら作品を展示しているのかもしれません。いつ行っても新しい作品に出会えるのが、ピカソ美術館の見どころ、魅力の一つでしょう。

ピカソ美術館のコレクションは5,000点以上

たくさんあるピカソ美術館

ピカソは多くの作品を残しているためもあるかもしれませんが、フランス国内だけでも3か所、生まれた国のスペインに5か所、ドイツとスイスに1か所ずつなど、世界中にいくつもピカソ美術館があります。2021年にはフランスのマルセイユ近くのエクス・アン・プロヴァンスに義理の娘さん(ピカソの2番目の妻ジャクリーヌ・ロックの娘)が世界最大のピカソ美術館をオープンさせるなんていう話もあるようです。また、ピカソの作品を所蔵しているところは世界中にあります。

優品ぞろいのコレクション

そんな状況で、パリのピカソ美術館のコレクションの大きな特徴は、長らくピカソが手元に置いておいた貴重な優品などが多いことだそうです。

前述のように、美術館のコレクションのはじまりは相続税として国に納められたものなどで、何度かに分けられて贈られているようですが、正式には1979年に絵画203点、彫刻158点、レリーフ29点、陶器88点、デッサン1500点以上、ノート約30点、版画1600点以上が国の管理下に移行しました。また、1990年にも1984年に亡くなった2番目の妻ジャクリーヌ・ロック(ジャクリーヌ・ピカソ)の遺族からの寄贈もコレクションに加わりました。

5,000点以上の幅広いコレクション

こうして、他に取得したものと合わせて5,000点以上のコレクションになっています。そのクオリティと幅の広さは、世界でも無二のものといえるようです。

ピカソの作品は、作風により、青の時代バラ色の時代キュビスム新古典主義シュルレアリスムなどの時代に分けることができますが、これらの作品の変遷がわかるコレクションになっています。また、絵画、彫刻、版画、イラストなどだけではなく、スケッチ、習作、下絵、ノート、エッチングなど制作過程がわかるものに加え、写真、画集、動画、書簡・書類なども収蔵しています。コレクションには、ピカソ本人のものだけではなく、ピカソ自身が収集したブラックセザンヌドガマティスなどの作品も含まれています。

こうしたピカソの創造の軌跡もたどることができるコレクションの幅の広さは、他のピカソ美術館にはない、この美術館の大きな見どころといえるでしょう。また、こうしたコレクションの質と幅と数が充実した展覧会につながっているのだと思います。

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ピカソ美術館へのアクセス・行き方

地下鉄1号線のサン・ポール(Saint-Paul)駅から歩いて7分、8号線のサン・セバスチアン・フロワサール(Saint-Sébastien-Froissart)駅またはシュマン・ヴェール(Chemin Vert)駅からも徒歩7分です。ポンピドー・センターからだと歩いて13分ぐらいです。

私は地下鉄の駅から歩いて行ったのですが、美術館は少しわかりづらかったです。スマホの地図を活用することなどが大切かもしれません。

最新情報

上記で少し触れましたが、2021年に義理の娘キャサリン・ハアン・ブレイさんが世界最大のピカソ美術館をオープンさせるようです。この美術館はフランスのマルセイユ近くのエクス・アン・プロヴァンスに建設され、ピカソとジャクリーヌの婚姻中に制作された約1,000点の作品を収蔵し、未公開の作品も展示されるようです。展示スペースは約1,490平方メートルの予定。世界最大とのふれこみですが、パリのピカソ美術館は展示スペースの面積ではなく一般公開スペースではありますが、約5,400平方メートルありますので、コレクションの数、面積ともにパリのピカソ美術館ほどではなさそうです。

ひとこと

ピカソはなんだかよくわからない変な絵を描く人ってずっと思っていましたが、スペインでゲルニカを見た時は衝撃でした。それ以来、ピカソの見方が変わり、この美術館も楽しみにしていました。大きすぎる美術館ではなく、ピカソの作品がまとまってみることができるのも魅力です。また、さまざまなテーマの展覧会が頻繁に行われていますので、何度訪れても良いでしょう。パリにあるのでめったにいけないのが残念ですが…。

info

Musée Picasso:Musée National Picasso ,Paris

  • 訪問日: 2017年12月13日
  • 開 館: 1985年10月
  • 入館者数: 765,471人(2015年)
  • 所在地: フランス・パリ(5 rue de Thorigny 75003 Paris)
  • アクセス:地下鉄1号線のSaint-Paul駅から徒歩7分、8号線のSaint-Sébastien-Froissart駅またはChemin Vert駅から徒歩7分
  • 入館料: 12.5ユーロ(大人・個人・当日) ※各種割引制度あり
  • 開館時間: 10時30分~18時、土・日・祝日・学校長期休みは9時30分~18時
  • 休館日: 月曜日、1/1、5/1、12/25
  • 公式サイト : http://www.museepicassoparis.fr/

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訪問した日の旅行記です。