カイロ歴史地区 – イスラムやコプトの歴史・文化を体感できる世界遺産

カイロ歴史地区/Historic Cairo:概要、歴史、見どころ、アクセス・行き方、感想など

「カイロ歴史地区」は、1979年に登録された世界遺産(文化遺産)。登録時は「イスラーム都市カイロ(Islamic Cairo / Le Caire islamique)」という名称でしたが、2007年に登録区域が拡大するとともに「カイロ歴史地区」に名称が変更されました。古くからのイスラム文化とイスラム文化流入前からの古いカイロの両方を見ることができます。

 

カイロの歴史

古代には、ナイル川をはさんで西側にあるギザにはピラミッドが築かれたり、カイロの南側20kmぐらいにあるメンフィスは首都として栄えた歴史があります。一方、カイロは、ファラオの時代に東に伸びる運河が築かれ地中海~ナイル川~カイロ~運河~紅海というルートの中継地であったり、現在、オールド・カイロと呼ばれる地区にローマ時代にトラヤヌス帝がバビロン要塞を築いたり、キリスト教成立直後からキリスト教が普及しキリスト教会が建てられたりしました。

639年からイスラム帝国の侵攻がはじまり、643年(641年?)にバビロン要塞の近くに「フスタート」という軍事都市が築かれます。カイロのイスラム化のはじまりであり、エジプトの首都機能のはじまりです。その後、支配者は移り変わりますが、ナポレオンのエジプト遠征まで、カイロはイスラム王朝の支配下にあったり首都として機能しましたました。

カイロという名前は、「カーヒラ」の英語読みのようですが、これは10世紀にチュニジアを本拠地とするファーティマ朝がエジプトを攻略した時に、フスタートの北3kmに「勝利者の軍事都市」を意味する「ミスル・アル・カーヒラ」が設けられたことに由来します。

「カイロ歴史地区」の概要

「カイロ歴史地区」は、ナイル川の東側にある新都市のさらに東の「イスラム地区」と新都市の南にある「オールド・カイロ」の大きく2つの地区にわかれます。広さは約8km×4kmの区域です。カイロには、一説に600を超えるモスクや1,000以上のミナレットがあるそうで、「千の塔の都」とも呼ばれています。

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イスラム地区の主な見どころ

1979年の世界遺産登録時には「イスラーム都市カイロ」という名称であったことからもわかるようにこの地区が当初の世界遺産です。イスラム地区にはシタデル(要塞)をはじめ、数々のイスラム建造物などがあります。

シタデル(Citadel)

シタデルは、アイユーブ朝の創始者サラーフッディーン(サラディン)が十字軍の侵攻に対する拠点として1176年に建設した城塞です。19世紀まで使われていたそうです。ここには、複数のモスクがあるほか、現在、軍事博物館や警察博物館などがあります。丘の上にありますので、カイロ市街を一望することができます。

ムハンマド・アリ・モスク(Muhammad Ali Mosque)

エジプト最後の王朝の始祖ムハンマド・アリが建設させたがモスク。1875年に完成しました。内部の広大さと独特の雰囲気に驚かされます。シタデルにあります。

スルタン・ハサン・モスク(Sultan Hasan Mosque)

このモスクは1356年着工、1363年に完成したそうです。当時は教育施設だったとか。このモスクのミナレットは高さ約80m、カイロで一番高いミナレットだそうです

ハン・ハリーリ(Khan Al-Khalili)

庶民も観光客も買い物するなんでもある巨大なスーク(市場)。香辛料、水たばこ、装飾品、服、土産物などいろいろなものが並び、見てるだけで旅の気分が盛り上がります。とにかく広く細い通りがいっぱいなので道に迷わないように注意が必要です。

ここでは、「ミルダケ、タダ!ミルダケ、タダ!」とよく声がかかります。それはいいにしても、観光客をだまそうとするのも少なくないようなので注意が必要です。スリもいるらしいです。

イスラム地区には、他にもアズハル大学、イブン・トゥールーン・モスク、アル・フセイン・モスクなどがあります。

イスラム地区へのアクセス・行き方

ナイル川の東側にある新市街。さらにその東にイスラム地区があります。シタデルは丘の上にあるので車などで行った方が良いでしょう。

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オールド・カイロの主な見どころ

カイロ発祥の地ともいえるオールド・カイロ。ローマ時代の遺構やイスラム教以前からこの地で信仰されていたキリスト教の教会などを見ることができます。

バビロン城壁跡(Babylon Fortress)

ローマのトラヤヌス帝が西暦98年に建設を命じたというバビロン城壁の遺構を見ることができます。

聖セルギウス教会(Church of St.Sergius :/Abu Sarga)

この教会はエジプトで最も古いコプト教会の一つ。5世紀に建造されたものの焼失などもあり12世紀ごろに再建されたそうです。この教会には幼いキリスト、マリア、ヨセフの聖家族がエジプトに逃れてきた際に身を隠したという洞窟・地下道の上に建てられているという言い伝えがあります。

聖バルバラ教会(Church of St.Barbara)

684年に建てられたものの焼失。11世紀に再建されました。初期コプト教会のバシリカ様式を受け継いだ構造が見られるのが特徴。父親をキリスト教に改宗させようとして、父親に殺害された少女バルバラ(バーバラ)に捧げられている教会です。

エル・ムアッラカ教会(El Moallaqa Church)

内部の装飾がとても美しい、聖母マリアに捧げられたコプト教の教会です。バビロン要塞の上に建設されたことから「吊るされた」という意味のアラビア語「ムアッラカ」と呼ばれるようになったとか。英語では、“Hanging church”とも呼ばれています。ここで見つかったイコンはコプト博物館に収蔵されています。

ベン・エズラ・シナゴーグ(Ben-EzrzSynagogue)

旧約聖書に「出エジプト記」があるぐらいですから、エジプトには古くからユダヤ人が住んでいました。ユダヤ教の教会のシナゴーグがあっても不思議はありません。ベン・エズラ・シナゴーグは、紀元前605年から前560年ごろに、エジプトに連れてこられたユダヤ人が建てたシナゴークが起源となっているらしいですが、その後、破壊されたようです。現在のシナゴーグは、8世紀に建てられ12世紀に再建されたもので、エジプト最古のシナゴーグだそうです。19世紀の修復の際に大量のゲニザ文書(ヘブライ文字アラビア語の記録文書)が発見され、古いユダヤ社会を知る上でとても貴重な資料になっているそうです。

聖ゲオルギウス教会(聖ジョージ教会/マリ・ギルギス:Church of St.George/Mari Girgis)

ギリシア正教の教会で、現在の建物は20世紀のものだそうですが、教会の起源は10世紀、あるいはそれ以前にさかのぼるようです。

コプト博物館(Coptic Museum)

コプトとはエジプトのキリスト教徒を指します。エジプト各地から発掘されたり寄贈されたコプトに関する遺物資料(イコン、聖書、絵画など)を収集し展示しています。展示はとてもシンプルなものです。内部は撮影禁止でした。

オールド・カイロへのアクセス・行き方

ナイル川の東側にある新市街の南側にオールド・カイロがあります。見どころが集中しているコプト教会などがある地域は地下鉄のマリ・ギリギス(Mari Girgis)駅が最寄り駅になります

ひとこと

カイロのさまざまな文化を見ることができる世界遺産ですが、やはりイスラム建築には驚かされます。また、ヨーロッパなどのキリスト教会とは違う教会も興味深かったです。

観光するにあたっては、この世界遺産に限ったことではないですが、エジプト、カイロは喧騒と活気がすごいので、“気合”が必要だと思います。

info

カイロ歴史地区/Historic Cairo

  • 訪問日 : 2018年1月4日
  • 所在地 : エジプト・カイロ
  • アクセス :カイロ歴史地区のイスラム地区へは車が便利、オールド・カイロへは地下鉄のMari Girgis駅が最寄り駅で駅のすぐ目の前にあります
  • 登録年 : 1979年
  • 登録区分 : 文化遺産
  • 開 館 : -
  • 入館者数:-
  • 入館料 :大人・個人・当日・外国人の入館料・入場料は、シタデルが100エジプト・ポンド、スルタン・ハサン・モスクが60EGP、コプト博物館が40EGP
  • 開館時間: コプト博物館は9時~17時(ラマダン時は15時まで)
  • 休館日 : -
  • ユネスコ世界遺産センターURL : https://whc.unesco.org/en/list/89/

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