ロンドン自然史博物館(大英自然史博物館)/Natural History Museum:見どころ、概要、歴史、アクセス・行き方、展示、感想、最新情報など
豊富な第一級の実物資料を存分に楽しめ見ごたえのある自然史博物館です。子どもから大人まで誰もが自然史に触れ学ぶことができます。自然史博物館の王道を行くようなミュージアムです。
自然史博物館の歴史・沿革
自然史博物館は、大英博物館の一部門として、1881年4月18日に開館しました。大英博物館から正式に独立するのは1963年ですが、1992年になってやっと自然史博物館(Natural History Museum)の名前になりました。そうしたことから、日本では長らく「大英自然史博物館」と呼ばれていました。
大英博物館は1759年の開館(一般公開)ですが、設立は1753年にさかのぼります。この年に、世界各地の幅広い文物・遺物・美術・工芸などを収集していた医師のハンス・スローン氏が亡くなり、そのコレクション71,000点以上を破格の2万ポンドで政府が買い取り、大英博物館の設立へとつながりました。この時の資料には自然史系のものがかなり含まれていました。そういう意味では、自然史博物館の開館年=大英博物館の開館年ともいえるでしょう。
その後、自然史系資料が増えていくにともない、新しい建物の必要性が高まり、大英博物館開館のおよそ110年後に新しい建物=分館がサウス・ケンジントンに建設されることになりました。建物は1873年に着工し1880年に完成。1881年にオープンしました。
1986年には隣接していた地質学博物館を吸収合併し、1989年には二つの建物をつなぐ回廊「今も見られる痕跡(Lasting Impressions)」が完成しました。
開館以降の建築で特に目を引くのが、2009年にオープンした現代的な建築の「ダーウィン・センター」でしょう。ここでは、植物や昆虫などの標本を収蔵するとともに、200人以上(館全体では300人以上)の科学者が最先端の機器を使用して調査研究を行っています。研究室は一部がガラス張りになっていて見学することもできます。
自然史博物館の3つのテーマ
環境破壊が急速に進むなかで、自然史博物館が焦点をあてているのは以下の3つのテーマです。
- 起源と進化(origins and evolution):45億年の太陽系、地球、生命の歴史
- 生命の多様性(diversity of life):種、生息環境、生態系における今日の自然の多様性
- 持続可能な未来(sustainable futures):私たちの社会が依存している自然の未来
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自然史博物館の見どころと展示
8,000万点以上の資料を収蔵
自然史博物館は、8,000万点以上の標本など資料を収蔵しています。もちろんこれらのすべてが展示されているのではないですが、展示資料を一つひとつをじっくり見ていくといくら時間があっても足りません。展示資料はどれもそれぞれの物語、魅力を持っているので、ゆっくり見ないのはとてももったいないのですが…。
民族学的な展示はない
例えば、アメリカ自然史博物館のように、人と自然のかかわりも重視し、文化人類学・民族学の展示が充実している自然史博物館は少なくありません。
しかし、このロンドン自然史博物館では、文化人類学・民族学的な展示はありませんでした。学問分野としては、動物学、自然人類学、昆虫学、植物学、古生物学、地学などで、天文学はないものの自然史博物館の王道的な分野だと思います。
動線が少しわかりにくい – フロア・マップやアプリを活用すると良い
建物自体が歴史あるものであったり、地質学博物館を取り込んだり、ゾーン構成が平面だけではなく縦にも構成されていたり、出入口が3か所に設けられていたりなどで、少し動線がわかりづらく、つぎはぎ感があるのが玉に瑕です。
一通り見たい場合は、どの入り口から入り、何から見るのか、何をみたいのかを考えておいた方がいいかもしれません。見学の際に役立つのがフロア・マップ(1ポンドのドネーションが求められます)。または、自然史博物館のスマホ・アプリ(無料)を入手するのも良いかもしれません。館内では無料でWi-fiが使えます。
4つに色分けされた展示ゾーン
展示は、大きく4つのゾーンから構成されていて、各ゾーンは色分けされています。各ゾーンとも豊富な実物資料を展示していることが大きな特徴です。
ちなみに、アイマックスなどの大型映像はありません。
グリーン・ゾーン
グリーン・ゾーンは本館の東側半分で地下1階から3階まで4層に分かれています。ここに展示されているのは、鳥類、昆虫、化石(海の爬虫類)、植物、鉱物などです。また、主に5-14歳の子どもたちがハンズオンでさまざまな標本・資料を学ぶことができる探究センター(Investigate Centre)があります。
ブルー・ゾーン
ブルー・ゾーンは本館の西側半分で、1階と2階とに分かれていますが、2階はあまりないので、実質的には1層です。ここに展示されているのは恐竜、魚類、両生類、爬虫類、哺乳類、海の無脊椎動物などです。また、生物学的な観点から人間にスポットを当てた展示も行っています。
レッド・ゾーン
旧地質学博物館だった建物で、1階から3階まで3層に分かれて展示があります。ここの展示は主に地学関係ですが、人間の進化に関する展示もあります。
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オレンジ・ゾーン
2009年にオープンした新館で、ダーウィン・センターが入っています。ここは、収蔵庫と研究室なのである意味でバックヤードですが、科学者・研究者の仕事内容を解説する展示などもあります。また、オレンジ・ゾーンとして屋外に生物園があります。
気になった展示 – 阪神淡路大震災に関する展示
地学の展示があるレッド・ゾーンに、阪神淡路大震災を題材として地震について紹介しているコーナーがあります。
この博物館の展示は、どれも素晴らしいものですが、このコーナーだけは好きになれませんでした。地震直後の神戸のスーパーマーケットを再現しているのは、一言でいうと、失礼ながらチープでした。また、地震の揺れを体験する装置は、これまたかなり残念なものでした。本当の揺れには程遠いものです。もちろん本当の揺れを再現すると危険性があるのだと思いますが、日本の消防署などが行っている起震車での地震の疑似体験のようなやり方で、スタッフを配置し体験してもらうこともできるのではないでしょうか。イギリスではめったに地震はないのかもしれませんが、地球科学的な視点からもきちんとしたことを伝えることは大切だと思います。
充実のイベント・教育普及プログラム
この館でもさまざまなイベントや教育普及プログラムが行われていますが、大人向きの中に面白いものがあります。
面白い大人向けプログラムの数々
Lates:毎月最終金曜日に18時から22時までの夜間開館が行われています。
Crime Science Live:館内各所で証拠を探しながら殺人事件を解決するイベント。毎月1回程度開催されているようです。
Yoga at the Natural History Museum:毎月1回程度、開館前の8時15分から9時30分まで、ヨガ教室が行われます。終わった後は、自由に見学できるようで、通常の開館時間は10時ですから、少なくとも30分はゆっくりと展示を独占できますね。
The Wider Earth:若き日のチャールズ・ダーウィンを描いた演劇が、2018年10月13日から12月30日まで上演されます。
Movie Nights at the Museum:映画鑑賞会。2018年10月28日は「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」「羊たちの沈黙」、29日は「ゴーストバスターズ」「シャイニング」が上映されるそうです。ハロウィーンにちなんでいるのですね。ポップコーン付き。
Dino Snores for Grown-ups:大人向けのお泊りイベント。サイエンス・ショーなど自然史博物館らしいメニューもありますが、コース料理、ライブ・コンサート、コメディ・ショー、飲酒、昆虫食体験、モンスター映画上映会など盛りだくさんです。子ども向きのDino Snores for Kidsもあります。
Silent Disco:ヘッドセット(イヤフォン)を付けて楽しむディスコ・イベントです。3人のDJが同時にプレイするそうです。チャンネルが切り替えらえるのでしょうね。もちろん、お酒も飲めます。近々では、2018年10月26日に行われます。Latesが行われた後、22時15分から1時まで。YouTubeに映像が上がってたのを見たのですが、不思議でとても興味深かったです
New Year’s Eve: Party Animals:12月31日20時から1月1日1時まで、カウントダウン、年越しイベントが開かれます。展示を見ることはいうまでもなく、ライブやディスコ、ゲーム大会を楽しんだりできるようです。今年は動物をテーマに着飾ってくることが推奨されています。
企画展・イベント・アトラクションの詳細は下記のページでチェックできます。
有料の学校団体向けプログラム
事前に予約してもらいワークショップを行うなど学校団体向けのプログラムを提供している館は少なくないと思います。この自然史博物館でもそうした学校団体向けプログラムを準備しています。無料のものもありますが、興味深かったのは、有料プログラム(たぶん実費程度)があったことです。
例えば、「恐竜探究現場(Dino Scene Investigation)」という化石の発掘などを行うワークショップは1人3ポンド(1ポンド=150円換算で450円)、「恐竜科学者(Dino Scientists)」は食べ物や生息環境などを自分で考え発見、学ぶプログラムは1ポンド、「緊急事態!地震と火山(Emergency! Earthquakes and Volcanoes)」のショーも3ポンドです。
いろいろなプログラムの提供の仕方があるのも良いことだと思います。
アクセス・行き方
最寄り駅は、地下鉄District線・Circle線・Piccadilly線のSouth Kensington駅で、歩いて5分ぐらいです。駅からは案内サインもあるので、迷うことはないと思います。
近くには、科学博物館やビクトリア&アルバート博物館があります。
最新情報
2017年の入館者数は4,434,520人で、前年比マイナス4%でしたが、大英博物館、テート・モダン、ナショナル・ギャラリーに続いて、イギリスでは4番目の入館者数でした。
企画展も魅力的なものが行われていますし、上記でふれたように大人向きなども含めていろいろなイベントやプログラムがあります。訪問を計画する際には、ウエブ・サイトは要チェックです。
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ひとこと
この自然史博物館は、近くにある科学博物館から分かれたのかと思ったのですが、そうではなく大英博物館から独立したものでした。
入館者は、子どもや家族連ればかりではなく、若者や大人が意外に多かったのが印象的でした。
info
Natural History Museum
- 訪問日: 2017年12月6日
- 開 館: 1881年4月18日
- 入館者数:4,434,520人(2017年)
- 所在地: イギリス・ロンドン(Cromwell Road, London SW7 5BD)
- アクセス: 地下鉄District線・Circle線・Piccadilly線のSouth Kensington駅から徒歩5分
- 入館料: 無料 ※企画展などは有料のものもあります
- 開館時間: 10時から17時50分
- 休館日: 12/24-26
- 公式サイト : http://www.nhm.ac.uk/
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訪問した日の旅行記です。