ビクトリア&アルバート博物館 - 230万点も収蔵しているアートとデザインの世界的なミュージアム

ビクトリア&アルバート博物館/V&A : Victoria and Albert Museum:見どころ、概要、歴史、アクセス・行き方、展示、感想、最新情報など

時代や空間を超えて良質な美術、優れたデザインの工芸・製品を230万点以上も収蔵している世界的なミュージアムです。その見ごたえある展示は、繰り返し何度も見たくなり、きっと訪れるたびに新たな発見があるでしょう。

※ビクトリア&アルバート「美術館」といわれることも多いですが、ここでは日本語公式サイトの記述に基づき「博物館」としました。http://www.vam.ac.uk/content/articles/v/v-and-a-japanese-language/

 

ビクトリア&アルバート博物館の歴史・沿革

ビクトリア&アルバート博物館の誕生のきっかけになったのは、1851年に開催されたロンドン万博(The Great Exhibition)です。この時、他国の製品を見たビクトリア女王の夫・アルバート公が、海外市場での競争を考えるとイギリスの産業・製品のレベルを維持し向上することが必要だと感じ、そのために万博の収益金をアートと科学に関するミュージアムや大学を作るために使うべきだと考えました。つまり、殖産興業のために見て学べるミュージアムや大学を設立するということでしょう。

これを受けて翌1852年、ビクトリア&アルバート博物館の始まりといえる「製品博物館(The Museum of Manufactures)」が5,000ポンドの費用で誕生しました。 この博物館は、バッキンガム宮殿近くのポール・モールのマールボロ・ハウス(Marlborough House)にありましたが、 ここはもともと宮殿で、ウェールズ公(後の国王・エドワード7世)が使用するためにあけ渡すことになり、新博物館がサウス・ケンジントンに建設されることになりました。こうして1857年に移転し、名前もサウス・ケンジントン博物館に変わりました。

博物館は順調に成長していき建物も増築されて行きました。1899年には、ビクトリア女王が新しく建設する建物の礎石を置く式典が行われましたが、この時に、名前が「ビクトリア&アルバート博物館」に改められました。

1909年には、アートやデザインに関する資料と科学や技術に関する資料が分けられ、科学博物館が分離・独立しました。

ビクトリア&アルバート博物館のミッション

設立当初のミッションは、アートとデザインの分野において、デザイナー、製造業者、一般市民を教育することにありました。しかし、現在のミッションは当初のミッションを踏襲しつつもより広範囲に、また世界的な視野を持つものに変わっています。

現在のビクトリア&アルバート博物館のミッションは、アート、デザイン、パフォーマンスの分野において世界をリードするミュージアムと認知されるとともに、デザインされた世界のいろいろなモノ・͡コトについて、調査研究や知識の蓄積、享受などを促進して、可能な限り多くの人々の生活を豊かにすることにあります。

Our mission is to be recognised as the world’s leading museum of art, design and performance, and to enrich people’s lives by promoting research, knowledge and enjoyment of the designed world to the widest possible audience.

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ビクトリア&アルバート博物館の見どころと展示

幅広いアートとデザインの作品230万点を所蔵、うち6万点を展示

設立の経緯からみてもわかるように、設立当初は、教育啓蒙的な視点から、古今東西の良い見本となる作品・製品などを集め広く見てもらうことが大切にされていたと思われます。

そうして集められた資料は、人類5,000年の歴史にわたる建築、家具、服飾、テキスタイル(布・織物)、写真、彫刻、絵画、宝飾品、ガラス、金工品、陶磁器、装丁などで現在、230万点以上になっています。そのうちのおよそ6万点を展示しているそうです。

7層の建物に5つにカテゴリー分けされた146の展示室

この地にビクトリア&アルバート博物館が誕生して以来の増改築のために、少し入り組んでいて動線がわかりにくいのですが、マップを見ると6層の建物に展示室が146室もあります。

展示は、「ヨーロッパ美術」「素材と技法」「アジアの美術・工芸」「短期展示(企画展示)」「現代美術」の5つにカテゴリー分けされています。なかでも、「素材と技法(materials & Techniques)」は、工芸関係のさまざまな分野の実物資料が展示されています。デザインの勉強をするのに確かに良いでしょうね。

1階:地下鉄駅からつながっている地下道からの入り口があるフロアで、実質的には地下1階といえます。企画展示室と「ヨーロッパ美術」の中世、ルネッサンス、1600年代から1815年までの展示室があります。各展示室には番号が振られていますが、1番の展示室はここにあります。

2階:建物正面入り口があるフロアで、こちらが1階といった方がいいように思います。企画展示、「素材と技法」は服飾と彫刻、「ヨーロッパ美術」は石膏、中世・ルネッサンス、ラファエロ、彫刻などが展示されています。そしてこのフロアの大きな見どころは「アジアの美術・工芸」の展示室で、アジア各地の美術・工芸が、仏教美術、中国、中東のイスラム美術、日本、朝鮮、南アジア、東南アジアに分けられて展示されています。

3階:1500年から1760年のイギリス美術、中世とルネッサンスなど「ヨーロッパ美術」の展示室があります。

4階:このフロアは「素材と技法」と「現代美術」の展示室があります。「素材と技法」は、金工品、宝飾、写真、版画、彫刻、タペストリーなどが展示されています。

5階:1760年から1900年までのイギリス美術の「ヨーロッパ美術」と、建築とガラス製本を展示している「素材と技法」の展示室があります。

6階:展示はなくセミナー室や博物館の会員用の部屋があります。

7階:「素材と技法」の陶磁器や家具の展示があります。最後の番号の展示室=146番展示室はこのフロアにあります。

日本の展示室

2階にある日本の展示室は東芝がスポンサーになっていました。東芝の調子はあまり良くないようですが、この展示室はどうなるのでしょうか。とても充実しているとともにかなり良い展示が行われていて、個人的にはかなり好きになった展示室ですので先行きが気になります。

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随所にあるハンズオン展示

興味をひかれたのは、いろいろなところにハンズオン展示があることです。美術館的なミュージアムではハンズオン展示はそんなに多くはないので面白く拝見しました。

また、家族向け(子ども向け)に、学習教材がまとめられているバックパックを貸し出したり、ワークシートを持ちながら見学するトレイルが設定されているのも注目です。

随所にあるハンズオン展示。これは頭部の飾りを体験できます。鏡ももちろん設置されています

きめ細かく多彩な教育普及プログラム

この館は教育にとても力を入れているようです。

他館でも行われているガイド・ツアー、学校団体向け(Primary School、Secondary School and College)、教員向け、家族向けなどがありますが、それぞれとてもきめ細かくプログラムが組まれています。特に注目したいのは次のものです。

Adult Learning:大人を対象としたプログラム。カルチャー教室的なものやワークショップ、講演会、パネル・ディスカッションなどがあります。

Professional Development Course:専門的な内容を研修しプロフェッショナルを養成するようなプログラムが数多くあります。中には1週間集中講座があったり、週に1度・12週間にわたり行われるものがあったりとバリエーションに富んでいます。

MA in the History of Design:デザイン史の修士号が取得できるプログラムが設定されています。

Young People:13歳から24歳までを対象として、アートやデザイン、ファッション、デジタル・メディア、パフォーマンス、建築などを学び、体験できるワークショップなどいろいろなプログラムがあります。

Communities:アートやデザインが社会のさまざまな問題にどうかかわっていくかの実験・実践していくプログラムで、アートやデザインの可能性を探るプログラムだと思います。正直なところ、かなり驚いたというか目からうろこというか、かなり気づかされることがありました。

具体的には、学習プログラムやイベントなどを通じて、元犯罪者初期認知症患者長期入院者難民・移民精神病疾患者老人ホーム滞在の高齢者ESOL(母語が英語でない人のための英語)、学習障害の大人などの社会的な課題・問題に取り組んでいるようです。また、アフリカからの移民などのアイデンティを考えたプログラム“Black African Heritage Programme”やLGBTQ(Lesbian, Gay, Bisexual, Trans, Queer)のアイデンティや歴史などの理解促進を図る活動を行っています。ちなみにLGBTという言葉は日本でもだいぶ定着しているかと思いますが、Q(Queer)は、性的マイノリティー一般をさすようです。

Museum Residency Programme:アーティストやデザイナーがビクトリア&アルバート美術館に滞在し作品を制作する活動が行われています。いわゆる、“アーティスト・イン・レジデンス”だと思います。

ビクトリア&アルバート博物館へのアクセス・行き方

最寄り駅は、地下鉄District線・Circle線・Piccadilly線のSouth Kensington駅で、歩いて5分ぐらいです。駅からは案内サインもあるので、迷うことはないと思います。

近くには、科学博物館や自然史博物館があります。

最新情報

2017年の入館者数3,789,748人で、前年比プラス26%でしたが、大英博物館、テート・モダン、ナショナル・ギャラリー、自然史博物館に続いて、イギリスでは5番目の入館者数でした。

V&A Dundeeが2018年9月15日に開館

ビクトリア&アルバート博物館には、V&Aこども博物館(The V&A Museum of Childhood )という分館がロンドン市内にありますが、2018年9月15日、スコットランドのダンディーにも「V&Aダンディー(V&A Dundee)」という分館が誕生しました。

スペインのビルバオにグッゲンハイム美術館の分館ができて地域が活性化したように、ここでもそうした効果が期待されています。年間入館者数目標は50万人らしいです。

建築設計は、日本の隈研吾氏。新国立競技場の設計でもおなじみの著名な建築設計者です。また、さまざまなワークショップなどを通じて市民参加でカタチにした部分もあるようです。

ひとこと

企画展も同時に複数の魅力的なものが行われていますし、さまざまな教育普及プログラムには驚かされました。特に、アートやデザインが社会とどのようにかかわっていくのかを考えるプログラムにはいろいろと考えさせられます。

さまざまな分野の美術・工芸の展示があるので、2時間ぐらいの滞在では消化しきれずおなか一杯になってしまいました。ゆっくりと何度も訪れたいミュージアムです。

info

V&A : Victoria and Albert Museum

  • 訪問日 : 2017年12月6日
  • 開 館 : 1852年4月18日
  • 入館者数 : 3,789,748人(2017年)
  • 所在地 : イギリス・ロンドン(Cromwell Road, London SW7 2RL)
  • アクセス : 地下鉄District線・Circle線・Piccadilly線のSouth Kensington駅から徒歩5分
  • 入館料 : 無料 ※企画展などは有料のものもあります
  • 開館時間 : 10時から17時45分 金曜日は22時まで
  • 休館日 : 12/24-26
  • 公式サイト : https://www.vam.ac.uk/

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