国立映画博物館 - トリノのシンボルにある、映画愛がいっぱいつまった博物館

国立映画博物館/Museo nazionale del Cinema:見どころ、概要、歴史、アクセス・行き方、展示、感想など

国立映画博物館は、トリノのシンボル的なタワー「モーレ・アントネッリアーナ」にある映画の博物館で、映画づくりの舞台裏や懐かしの名作などに出会うことができます。

 

モーレ・アントネッリアーナにある映画博物館

映画博物館は、トリノのシンボル的なタワー「モーレ・アントネッリアーナ(Mole Antonelliana)」にあります。

このモーレ・アントネッリアーナは、とてもユニークな形をしていますが、もともとはシナゴーグ(ユダヤ教会)として1863年に建設がはじまり1889年に完成しました。建設途中にユダヤ教会が手を引いたようですが、トリノ市が購入しイタリア統一のシンボルにもしたようです。内部は1990年代まで展示場として使われたといいます。この建物の名前は建築設計者の名前にちなんでいます。

てっぺんまでの高さは、167.5m。完成当時はヨーロッパで一番高い建物でした。現在、高さ85m地点に展望スペースが設けられていて、トリノ市内が一望できます。

映画博物館の歴史

1941年から歴史家(映画史家?)のマリア・アドリアーナ・プローロが1941年から映画に関する資料のコレクションをはじめ、1958年にPalazzo Chiablese(たぶん王宮のところ。現在、企画展などが行われているところだと思います)に博物館を開館させました。しかし、安全上の理由から1985年に閉館。その後、1986年に図書室を再開させたり、1989年に映画館を設けたりなどの活動が行われ、1990年にはマリア・アドリアーナ・プローロ財団が設立されました。そして、満を持して、2000年7月20日、モーレ・アントネッリアーナに映画博物館が開館(再開館)しました。開館後も展示などに手が加えられています。

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多彩に映画に親しめる展示

映画博物館は、およそ180万点をコレクションしています。その内訳は、サイトによると、100万点の写真、535,000点のポスターや宣材、104,000点の定期刊行物、3万点の映画フィルム、41,000点の映画のビデオテープ類、46,500点の書籍、15,000点の資料類、1万点の美術関係資料、9,500点の機材、6,000点の記念品類、3,000点のレコードなどです(ちなみに、サイトの数値とプレス・リリースの数値が少し異なっています)。こうしたコレクションがすべて展示されているわけではないですが、3,200平方メートルの展示スペースにいっぱい展示されているのは感動的です。

建物の特性上、フロア数はいえないので高さ表記になっていますが、5層に分かれています。

映画考古学:ARCHEOLOGIA DEL CINEMA

1階に当たるのが高さ5m地点。ここは映画の誕生までの映画前史や映像が動いて見える原理・仕組みを体験できるコーナーで、フェナキストスコープ、ゾートロープ、だまし絵、ステレオ写真、マジック・ランタンなどが展示されています。エジソンが発明したキネトスコープもありました(もちろん複製)。

寺院ホール:L’AULA DEL TEMPIO

高さ10m地点にあるホールで、イタリアの無声映画の傑作や映画の街・トリノをテーマとしたコーナーがあります。ミニ企画展というか特集的な展示も行われるようです。このフロアで目立つのはなんといってもモロク神(Moloch)の像でしょう。イタリアで1914年に制作された無声映画「カビリア(Cabiria)」で使われたものだそうです。フロアの名称はこの映画にちなんでいるのかもしれませんね。

映画機器・機材:LA MACCHINA DEL CINEMA

高さ15m地点のフロア。文字通り、カメラなどの撮影機材や映写機も置かれていますが、映画製作の舞台裏、映画づくりをテーマとしたフロアです。監督、脚本、俳優、衣装、撮影、編集、音声(音入れ)などのコーナーがあります。有名俳優・女優が使用したものなども展示されています。

ポスター・ギャラリー:GALLERIA DEI MANIFESTI

高さ18m地点。懐かしの映画から比較的最近のものまでポスターなどが数多く展示されています。日本映画のポスターもあります。

絵コンテやスケッチ、写真なども見ながら、壁面のスロープをらせんのように降りていくと寺院ホールに行けます。

クーポラ登頂体験: SALITA DELLA CUPOLA

最近できたようですが、クーポラ(建物のドーム部分)の展望スペースがある高さ85mまで内部階段を使って上がれるガイド・ツアーがあるようです(イタリア語のみ。別途有料)。

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展望スペース

ガイド・ツアーに参加するのもいいですが、エレベーターを使って85m地点の展望スペースまで行くのが一般的です。チケットは博物館のチケットとは別に購入する必要があります。博物館とのセット券もあり少し安く購入することができます。(博物館は11ユーロ、エレベーターは8ユーロですが、セット券は15ユーロ)。展望スペースだけを見学する人も多いようです。

このエレベーター、すごい迫力でドキドキです。吹き抜けをひっぱりあげられていきます。人が乗るケージは4面ガラス張りでシースルー。中空を飛んでるような感覚です。これだけで十分、アトラクション、見どころです。展望スペースからの景色もとてもきれいで、トリノの街並みが良く見えます。

映画博物館へのアクセス・行き方

トラム(路面電車)のパラッツォ・ヌォーボPALAZZO NUOVO)駅が最寄り駅になるようです。そこからは歩いて3分ほどです。トリノ王宮からは歩いて12分ぐらいです。

「トリノ、24時からの恋人たち」

この博物館が舞台の映画があります。「トリノ、24時からの恋人たち」というイタリアでヒットした恋愛映画で、主人公の一人がこの博物館の夜警だそうです。エンディングには、この博物館の創設者マリア・アドリアーナ・プローロへの献辞があるらしいです。まだ、観られていないのですが、なんとか観たいと思います。

【2018年11月14日追記】

観ました!確かにここが舞台でした。創設者への献辞もありました。イタリアで公開されたのが2004年(日本は2006年)のようですから、今から15年ぐらい前です。展示が変更されたりして館内の雰囲気は少し変わっていますが、それでも今と同じような展示もうつされています。

映画としての感想ですが、映画への愛情がそこかしこに見られて良いのと、不思議な恋愛の空気が流れているという感じがしました。「ふーん」で終わってしまう人も多いかもしれませんが、ハマる人はハマるかも。ハリウッドの恋愛映画とはまったく違うことは確かです。休みの日の前の夜にアンニュイな気分でまったりと観るのにいいかもしれません。

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ひとこと

映画への愛が感じられる博物館でした。

トリノになぜ国立の映画博物館があるのかわからなかったのですが、トリノはマカロニ・ウエスタンが数多く制作されるなどイタリアの映画産業の中心的な場所だったようです。

日本にも国立のフィルムセンターがあり映画フィルムやゆかりのものを収集しているようですが、本格的な映画博物館がないのが残念です。世界的な監督もいるのに。映画やアニメを含めた国立のメディア・ミュージアムがあっていいと思うのですが…。

info

Museo nazionale del Cinema

  • 訪問日: 2017年12月20日
  • 開 館: 2000年7月20日
  • 入館者数: 69万人(2016年)
  • 所在地: イタリア・トリノ(Via Montebello 20, 10124 Torino)
  • アクセス: トラム(路面電車)のPALAZZO NUOVO駅から徒歩3分
  • 入館料: 11ユーロ(大人・個人・当日) ※各種割引制度あり 展望エレベーターは別料金(セット券あり)
  • 開館時間: 月・水・木・金 9時~20時、土は23時まで、日は22時まで
  • 休館日: 火曜日
  • 公式サイト : http://www.museocinema.it/

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訪問した日の旅行記です。