エピック・アイルランド移民博物館/EPIC The Irish Emigration Museum:見どころ、概要、歴史、アクセス・行き方、展示、感想など
アイルランドは、アメリカなどに1000万人もの移民を出しているそうです。館名にもimmigrationではなく emigrationが使われています。ちなみに、アメリカ・ニューヨークにあるエリス島移民博物館は、Ellis Island National Museum of Immigrationです。
アイルランドと移民
アイルランドは、長きにわたるイギリスによる植民地支配の影響などがあり、商品作物中心の農業だったようです。豊かな国とはいえない状況のなか、19世紀半ばに、有名な「ジャガイモ飢饉(Potato Famine)」があり、この時にアメリカなどへ移民が数多く渡ったそうです。今日では、各界で活躍するアイルランド系アメリカ人が数多くいますが、当初は差別に苦しんだようです。これは、イギリスの植民地出身であったことや、プロテスタントが主流であったアメリカではカトリック教徒のアイルランド人は異質な目で見られたためだそうです。ちなみに、伝統的に警察官や消防士はアイルランド系が多いといいます。アイルランド系で有名なのは、ケネディ大統領でしょう。
エピック・アイルランド移民博物館の沿革・歴史
エピック・アイルランド移民博物館(移民資料館)の創設者は、アイルランド出身のネビル・イズデル(Neville Isdell)氏。コカ・コーラの会長兼CEOだった方です。
同氏は、アイルランド出身の移民であることを忘れたことはないこと、アイルランドはいつもこころの中にあったことなどを述べています。また、コカ・コーラの会長兼CEOとして世界中を旅したけれど、世界中のアイランド移民の物語は語り継ぐ価値のあることだとずっと信じてきたので、ミュージアムを設立したとも語っています。
My own experience of being an emigrant has always stayed with me. And as they say, I left Ireland but Ireland never left me. Before retiring as Chairman and CEO of Coca-Cola in 2009 my career took me all over the world, to 151 countries, living and working in 5 different continents. I’ve always believed that the story of Irish people around the world was one worth telling, and so, I founded EPIC in 2016.
~ウエブ・サイトより~
開館は2016年ですが、ネビル・イズデル氏が2013年に、地域活性化の拠点とすべく移民博物館があるCHQ ビルを購入したことに端を発しているようです。出身地への還元という意味もあったのでしょうね。
このCHQビルがあるのは、リフィー川の下流で港湾地区といっても良いドックランド地区にあります。CHQは Custom House Quay(税関建屋ふ頭)の頭文字のようです。この建物が建設されたのは1817年から1820年にかけてで、タバコやお茶、酒の倉庫として使用されていました。1856年には、ここでクリミア戦争からの帰還兵を祝う祝賀会の会場にもなったそうです。
現在、この建物には、移民博物館があるだけではなく、カフェやレストラン、ショップなどの商業施設も入居しています。
エピック・アイルランド移民博物館の展示・見どころ
移民博物館は、20の展示コーナーから構成されていて、その内容は、アイルランドの移民についてだけではなく、広くアイルランドの1500年に及ぶ歴史や文化についても紹介されています。アイルランドの移民を知るうえで、そのアイデンティをきちんと知り学ぶことが大切ということが背景にあるのでしょう。
展示は、資料展示はほとんどなく、映像やPCなどを活用したインタラクティブ性の高いデジタル系展示が中心です。デザインがとても良く質の高いもので、一言でいうならおしゃれな展示です。個人的には、展示資料・物の展示がもう少しあった方が良いと思うのですが…。
1ユーロでオーディオ・ガイドを借りることもできます。残念ながら日本語はないのですが、英語、ドイツ語、イタリア語、フランス語、スペイン語の5か国語が用意されています。また、スマホのアプリがあり、無料でダウンロードすることができます。
パスポートを持ちながら見学
入館時にパスポートを受け取ります。もちろん本物ではありません。スタンプラリーの台紙になっていて、20か所の各コーナーに設置されたスタンプを押すことができます。すべてを集めると、最後にデジタル・ポストカードをメールで送ることができます。このパスポート台紙はある意味、館内マップの代わりにもなっています。
近隣にも移民関連のモニュメント・施設
近くには移民関連のモニュメント・施設もあります。
アイルランドから北米に数多くの移民を運んだ「帆船ジーニー・ジョンストン号(Jeanie Johnston Tall Ship)」が係留されています。この帆船はじゃがいも飢饉の資料館としても活用されているようです。
もう一つは、飢饉メモリアル像(Famine Memorial Sculptures)。1845年から1852年にかけての大飢饉(じゃがいも飢饉)の影響で、1846年にここから旅立った最初の移民の人々を表現しています。
<広告>
エピック・アイルランド移民博物館へのアクセス・行き方
路面電車LUASのレッド・ラインのGeorge’s Dock駅からは徒歩3分程度です。トリニティ・カレッジからだと歩いて12分程度のようです。
ひとこと
このエピック・アイルランド移民博物館も、アイルランド史にとっては重要な意味のある場所で、訪れてみるべき場所の一つだと思います。
奇しくもここを見る4日前の11月28日にアメリカ・ニューヨークにあるエリス島移民博物館を見学しました。入ってくる方の移民がテーマの資料館です。大西洋を挟んで、数日の違いで出る方と入る方の両方の移民資料館を見るのは不思議な気がしました。
【関連記事】
info
EPIC The Irish Emigration Museum
- 訪問日: 2017年12月2日
- 開 館: 2016年
- 入館者数: -
- 所在地: アイルランド・ダブリン(CHQ, Custom House Quay, Dublin 1, Ireland)
- アクセス: 路面電車LUASレッド・ライン(赤線)のGeorge’s Dock駅から徒歩3分程度。トリニティ・カレッジからだと歩いて12分程度
- 入場料: 14ユーロ(大人・個人・当日) 割引制度あり
- 開館時間: 10時から18時45分
- 休館日: 12/24-26
- 公式サイト : https://epicchq.com/
【姉妹サイトの投稿記事】
訪問した日の旅行記です。