国際奴隷博物館 - 奴隷貿易で栄えたリバプールを見つめる博物館

国際奴隷博物館/International Slavery Museum:概要、歴史、アクセス・行き方、展示、感想、最新情報など

リバプールのかつての発展は、奴隷貿易抜きには考えられません。この博物館は、奴隷貿易に真正面から向き合う場になることが期待されています。

 

リバプールと奴隷貿易

リバプールは、産業革命の際に、製品の積出港、原材料の輸入港として栄えたイメージがあったのですが、産業革命以前の17世紀後半から奴隷貿易などで栄えていました。より正確にいうなら、リバプールは奴隷貿易を含む大西洋の「三角貿易」の拠点として繁栄しました。つまり、イギリス(リバプール)から製品を西アフリカに輸出し、西アフリカで獲得した奴隷をアメリカ・西インド諸島へ運び、アメリカ・西インド諸島からイギリスに綿花・砂糖・タバコなどを運ぶという三角形を描くかたちの貿易で大いに潤ったのです。この富の蓄積が産業革命の原動力ともなったようです。

ちなみに19世紀には、イギリス~インド~中国の三角貿易で大きな利益があったようです。

国際奴隷博物館の沿革・歴史

こうした奴隷貿易による発展の歴史を持つリバプールに、国際奴隷博物館が開館したのは2007年8月23日。8月23日は、ユネスコが定めた「Slavery Remembrance Day(奴隷貿易とその廃止を記念する国際デー)」です。また、2007年はイギリスの奴隷貿易廃止200周年であるとともにリバプール市の800周年記念の年でもありました。

国際奴隷博物館の前身は、マージーサイド海事博物館内に1994年設けられた「大西洋奴隷展示室(Transatlantic Slavery gallery)」ですが、奴隷問題の重要性を鑑みて、奴隷問題を伝えていく場のより強い必要性があることから、国際奴隷博物館へと発展させていくことになったようです。

設立・運営は、リバプール博物館やワールド・ミュージアムなどと同じNational Museums Liverpoolという組織が運営しています。このNational Museums Liverpoolは、政府外公共機関(Non Departmental Public Bodies:NDPB)という名前の組織形態らしいですが、日本でいう独立行政法人的な組織のようです。

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国際奴隷博物館の目標

「奴隷にされた人々の語られざる話に耳を傾け、過去と現在の奴隷について学ぶ」ということが大きな柱になっているようです。

Hear the untold stories of enslaved people and learn about historical and contemporary slavery.

また、ウエブ・サイトには、運営母体・National Museums Liverpoolのトップの言葉として、世界の奴隷や奴隷貿易の深く長きにわたる影響を見つめることで無知や無理解に対処することを狙いとしていることが述べられています。

Our aim is to address ignorance and misunderstanding by looking at the deep and permanent impact of slavery and the slave trade on Africa, South America, the USA, the Caribbean and Western Europe. Thus we will increase our understanding of the world around us.

国際奴隷博物館の展示

国際奴隷博物館の展示は、規模の小さなもので、「西アフリカの暮らし(Life in West Africa)」「奴隷にされ運ばれる(Enslavement and the Middle Passage)」 「受け継がれたもの(Legacy)」の3つの展示コーナーから成り立っています。どれも重いテーマです。

ただ誤解を恐れずあえていうと、面積的なことだけではなく、少し物足りませんでした。一つには私の英語力不足で十分な理解ができていないことが原因だと思いますが、各テーマの深堀が薄い感じがしました。また、もう一つの理由は、「国際」というわりには大西洋での奴隷貿易のことばかりだったためです。リバプールにある奴隷博物館ですから、西アフリカの奴隷に関することが主となるのは理解できますし、そうであるべきだと思いますが、もう少し古代から現代までの奴隷のことや、世界各地の奴隷のことにふれても良いのではと感じました。そうした内容は企画展で取り扱うのかもしれませんが常設で少しでも展示があると問題提起ができるのではないでしょうか。せっかく“Transatlantic Slavery gallery”から“International Slavery Museum”に生まれ変わったのですから。

この博物館のもう一つの大きな課題は、スペースのことかもしれません。広さが足りないという意味ばかりではなく、マージーサイド海事博物館の展示コーナーのように思えてしまいます(ウエブ・サイトにもマージーサイド海事博物館の4階にあると書いてありました。実際のところ、私もマージーサイド海事博物館を見ていたら、いつの間にか国際奴隷博物館の展示を見ていました)。マージーサイド海事博物館との一体性は強みであると同時に弱みのように思えました。設立の経緯からするとこの一体性は不思議はないのかもしれませんが、難しいテーマですがとても意義あるミュージアムですので、より多くの人が訪れ、考える場となるべく、空間的な独立性をさらに高めるとより良く素晴らしいと感じました。

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国際奴隷博物館へのアクセス・行き方

リバプールの観光スポットが集中しているアルバート・ドックにあり、マージーサイド海事博物館の4階(イギリスでは3rd Floor)です。

ローカル鉄道マージーレイル(Merseyrail)・ウィラル・ライン(Wirral Line)のJames Street 駅が最寄り駅になり、歩いて5分です。

リバプールの中央駅(Liverpool Central Station)からは徒歩10分ぐらい、リバプール・ライム・ストリート駅(Liverpool Lime Street Station)からは徒歩20分ぐらいです。

最新情報

2017年の入館者数は、398,221人で、対前年比プラス4%だったようです。

ひとこと

小規模なミュージアムですが、こうした負の歴史にもきちんと向き合っている、とても意義あるミュージアムで、訪れるべきミュージアムの一つだと思います。

info

International Slavery Museum

  • 訪問日: 2017年12月5日
  • 開 館: 2007年8月23日
  • 入館者数:398,221人(2017年)
  • 所在地: イギリス・リバプール(Royal Albert Dock, Liverpool Waterfront, Liverpool, L3 4AQ)
  • アクセス:ローカル鉄道Merseyrailのウィラル・ライン(Wirral Line)のJames Street 駅から徒歩5分、Liverpool Central駅から徒歩10分、Liverpool Lime Street駅から徒歩20分
  • 入館料: 無料
  • 開館時間: 10時から17時
  • 休館日: 12/24-26、12/31、1/1
  • 公式サイト : http://www.liverpoolmuseums.org.uk/ism/

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訪問した日の旅行記です。