ロンドン交通博物館 - 子どもから大人まで気軽に楽しめる交通博物館

コヴェント・ガーデンの花き市場だった建物を改装したロンドン交通博物館

ロンドン交通博物館/London Transport Museum:見どころ、概要、歴史、アクセス・行き方、展示、感想、最新情報など

ロンドンの交通をテーマとしたミュージアムです。昔の車両やゆかりの品々などが展示されているほか、小さな子どもたちが遊べる場所や未来の交通を考える展示などもあります。子どもから大人、交通ファンまで誰もが楽しめる交通博物館です。

 

ロンドン交通博物館の歴史・沿革

ロンドン交通博物館は、1980年3月28日開館で40年近い歴史があります。ただし、コレクションの起源は1920年代にさかのぼり2台のビクトリア朝デザインの馬車バスとエンジン付きバスが保存されたことに始まります。また、ロンドン南部のクラパムというところに、1960年代に英国交通博物館(The Museum of British Transport)が開館しコレクションが収蔵されましたが、およそ10年後に、ヨークに新しくできた国立鉄道博物館(1975年開館)にメインの資料が移管されたことにともない閉館しました。一部残ったコレクションは、ガレージで埃をかぶっていたり、郊外のサイオン公園の建物内に理想的とはいえない状態で展示されていたそうです。

コヴェント・ガーデンの花市場ビルで開館

コヴェント・ガーデンは、17世紀からロンドンの野菜・果実・花きの市場としてにぎわってきました。そして、フラワー・マーケット・ビルは1871年に建設され、およそ100年間、ロンドンの花きの市場として中心的な役割を担ってきましたが、1974年に市場が移転しその役目を終えました。

このフラワー・マーケット・ビルが再開発され、アン王女ご臨席のもと、1980年にロンドン交通博物館が開館しました。

開館後、ミュージアムの成長・発展にともない、このビルは2度ほど大規模な改装が行われています。2005年から2007年にかけて行われた改装の際には一時休館したようです。

余談ですが、映画「マイ・フェア・レディ」で、オードリー・ヘップバーンがコヴェント・ガーデンの花売り娘を演じていますね。どこまで忠実に再現しているのかはわかりませんが、昔の雰囲気(20世紀初頭?)が映画で感じられます。

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ロンドン西部のアクトン車庫(収蔵庫)

交通関係の資料は車両など大型なものが多いことや資料の増大に対応するため、1999年にロンドン西部のアクトン(Acton)に車庫(収蔵庫)が建設され、コヴェント・ガーデンの本館に展示・収蔵しきれない資料を保管しています。広さは6,000平方メートルあるようです。

こちらは、“Open Weekends”というプログラムで年に3回ほど一般公開が行われます。2018年は4月、7月、9月の週末1回ずつです。また、“Guided Tours”プログラムで毎月1回金・土の2日間、ツアー形式で見学ができるようです。アクトン車庫の見学は予約が必要そうですので、詳しくはウエブ・サイトでご確認ください。

ロンドン交通博物館の目的

ロンドン交通博物館は、ロンドン交通局の外郭団体が管理運営しています。博物館の建設・設立はロンドン交通局自体がしたのかこの外郭団体がしたのかはわかりませんが、密接に連携して作ったことは間違いないでしょう。

この博物館の目的は、ロンドンの交通の歴史を保存し伝えることや、首都ロンドンの過去からの成長・発展について理解を促進すること、そして、その未来を考えることにかかわってもらうことにあります。

Our purpose is to conserve and explain the history of London’s transport, to offer people an understanding of the Capital’s past development and to engage them in the debate about its future.

ロンドンの交通の歴史を知ってもらうばかりではなく、市民参加で交通に限らず未来のロンドンを考えるということを大切にしているのですね。

ロンドン交通博物館の見どころ、展示

開館の時には1,000点ぐらいだった収蔵資料ですが、現在、鉄道車両、バス、トラムなどの大きなものからサイン(看板)、写真、ポスター、ユニフォームなど49万点以上をコレクションしています。コヴェント・ガーデンの本館に展示されていないものは、アクトンの車庫・収蔵庫に保存されていて、そちらには38万点はあるようです。

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子どもから大人まで楽しめる展示

交通系のミュージアムは、一般的にファミリー客が多く、訪れた時にもそうでした。一方で、鉄道ファンなどコアな層も多く、何を展示するのかのチョイスをはじめ細部にこだわりが求められるのが交通系ミュージアムです。こうした両極端な層と一般的な来館者など、バランスをとった展示構成がされていて、誰もが楽しめるミュージアムだと思います。そうした良い空間・展示のミュージアムになっている一因は、デザインの良さだと感じました。

スタンプラリーで楽しむ

フロア・マップをもらおうと思ったのですが、ないということでした。ここはすごく巨大な施設ではないのでマップがなくても十分に楽しめます。フロア・マップの代わりに渡されたのがスタンプ・ラリーの台紙。厳密にいうと、スタンプではなく、館内各所のポイントで差し込み、自動車やバスなど乗り物のシルエットになっている型抜きをします。なかなか良いアイディアです。館内13か所に設置されていました。

運転シミュレータはちょっと残念

乗り物の博物館のお約束といえば、運転シミュレータです。

ここにも地下鉄の運転シミュレータがありましたが、ちょっと残念な感じで、日本で見るものの方が本格的でクオリティが高いように感じました。

ちなみに、もう一つのお約束の展示といってもいいと思いますが、鉄道ジオラマは見当たりませんでした。

日本のシミュレータを見慣れているためか、ちょっと物足りないです

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職業教育や館外ツアーもある教育普及プログラム

ロンドン交通博物館の教育普及プログラムは、家族向けプログラムなども含めて基本的なものはだいたいあると思いますが、特に、学校団体向けのプログラムが充実しているように見えます。子どもたちにやはり交通博物館は人気なのでしょう。もちろん、大人向けの夜間開館“Friday Lates”などもありますし、幅広い層に対応しています。この交通博物館ならではのものをいくつかご紹介します。

職業教育プログラム

交通博物館の特性を生かしていて交通博物館らしいと思った教育プログラムがあります。若者に向けた職業教育のプログラムです。このようなプログラム導入の背景には若者の失業問題があるのかもしれませんし、交通関係の仕事において人手不足があるのかもしれません。

Young Volunteer Projects:18歳から25歳を対象としたプログラムで、ボランティア活動を通じて職業体験をしてもらうことを大きな目的としているようです。博物館の活動を知ってもらうこともさることながら、やはり交通に関する仕事を知ってもらうことが狙いなのでしょう。2018年は9月25日にオリエンテーションがあり、10月1~5日、11月14~16日が日程になっています。その後の実際の就職に向けて履歴書を提出する機会も提供されるようです。

Route into Work:このプログラムは16歳から24歳の求職中の若者を対象とした3日間のコースで、交通関係の仕事を学ぶことができます。インターンシップ的なプログラムかもしれません。面接の機会も提供されます。面白いのはロンドン交通局以外の雇用主にも開放されていて、参加者に仕事の説明などができるようです。

館外で行われるプログラム

Hidden London:ふだんは見られない場所が見られる館外ツアー

使われなくなった駅や施設を見学するツアーを行っています。なかにはチャーチルが使った秘密の駅や、映画やドラマのロケが行われたり防空壕になった駅などもあったり、普段は公開されていないところを巡るいろいろなコースが設定されています。有料ですが、売り切れになっているものもあり、人気のようです。

Heritage Vehicle Outings:歴史的な車両の乗車体験ができる

鉄道やバスなど歴史的な車両に乗車できる体験を提供しています。近々では、クリスマス時期の12月21日と22日に、昔の2階建てバスに乗ってクリスマス時期の街を巡るツアーが設定されています。両日とも家族向けと大人向けがあります。

ロンドン交通博物館へのアクセス・行き方

地下鉄Picadilly線のCovent Garden駅から徒歩3分、Nothern線・Picadilly線のLeicester Square駅から徒歩7分、他にHolborn駅、Embankment駅、Charing Cross駅からも近いです。コヴェント・ガーデンを目指していくのが良いでしょう。

最新情報

2017年の入館者数382,405人で、前年比マイナス5.5%でした。

ひとこと

規模が大きなミュージアムではありませんが、楽しいミュージアムでした。お子さんと一緒に行くのも良いでしょうし、交通ファンの方もロンドンの交通を知る良い場所なのではないでしょうか。

それにしても、Hidden Londonのツアーは面白そうです。機会があればぜひ参加してみたいです。

info

London Transport Museum

  • 訪問日: 2017年12月7日
  • 開 館: 1980年3月28日
  • 入館者数: 382,405人(2017年)
  • 所在地: イギリス・ロンドン(Covent Garden Piazza, London, WC2E 7BB)
  • アクセス:地下鉄Picadilly線のCovent Garden駅から徒歩3分、Nothern線・Picadilly線のLeicester Square駅から徒歩7分、他にHolborn駅、Embankment駅、Charing Cross駅など
  • 入館料: 17.5ポンド(大人・個人・当日) 各種割引制度あり
  • 開館時間: 10時から18時
  • 休館日: 12/24-26
  • 公式サイト : https://www.ltmuseum.co.uk/

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訪問した日の旅行記です。